本を購入する際には、いつもAmazonのレビューを参考にしている。今回、評価の高かったFacebook 女性COO、Sheryl Sandberg の著書 “Lean In”をiBooksから購入した。
ebookよりも、本当は、old fashion なpaper bookが好きなのだけれども、本を買うにも一苦労するここでは(本屋はあるのですが、その場所を探し、その本を探すという労力が日本の比ではない)、wifi完備の家から、その場ですぐに購入し、読めるというebookの便利さがこの上なく有り難く、思わず感謝してしまいました。
しかも、今まで気づかなかっただけなのか、単語を長押しすると、”Define”というタブが浮かび上がり、クリックすると、なんと、その単語の意味、定義が(英英)出てくるという、便利な機能がついている。難しい単語に出会っても、いちいち辞書を引かなくてよいというのは、non-native readerにとって非常に便利。またしても、感動。(不便な生活下におかれると、ちょっとしたことに、無性に感動します)簡単に文章検索などもできる。今後は、ebookが読書の中心になりそうです。
さてさて、このLean In。平易な英語で読みやすく、あっという間に読みきってしまったが、私は、正直、この評価の高さが理解できなかった。というのも、おそらく、この本のprincipleである彼女の基本信念、” A truly equal world would be one where women ran half our countries and companies and men ran half our homes. I believe that this would be a better world” 「真に平等な世界とは、女性が半分国や企業を経営し、男性が半分、家庭を運営するという世界である。私は、これが、より良い世界だと考えている」に賛同できないからだと思う。そして、この本の根底にこの概念があるため、その通りだなという箇所もあるのだが、全般的に、う〜ん、と素直に落ちてくれないのだ。
筆者の言う平等な世界がより良い世界かというと、疑問だ。働きたいと思う女性が働ける社会、家庭を守りたいという男性が家庭を守っても偏見に遭遇しない社会であれば良いと思うが、割合なんて全くどうでも良いというのが私の考えだ。(好んで、家の外で働いていない母親だって多いだろうし)
一方、彼女自身に関しては、私は、すごく普通の人という印象を持った。彼女は、基本的なことを知らず、職場で恥をかいたり、気負いを感じたり、周囲が自分をどう思うか気にしたり、私達と変わらない「普通の女性」で、正直に自分の気持ちを綴っており、その点は好感が持てた。Google, Facebookに勤めていながら、手帳にペンでスケジュール管理をするというアナログなところなんかは、「あ、同じだ!」と共感してしまった。ハーバード大、ハーバードビジネススクール卒という経歴を持ち、兄弟も医者で、優秀なことは間違いないのだが、extraordinary な感じは受けなかったのだ。偉業を成し遂げたり、人よりちょっと飛び抜けることをするのも、所詮、同じ「人間」なのだ。
私が思うに、彼女と同じぐらい優秀な女性や彼女より優秀な女性は、たくさんいると思う。そんな中、なぜ、彼女が仕事で成功できたかというと、「愛される力」が他の優秀な女性より秀でていたからではないか。素直に知らないことを認めたり、(多くのアメリカ人は、知らないことに遭遇してもあたかも知っているかのように切り抜ける力を持っている)、思わず、感情が溢れ、職場で涙を流してしまったり、恵まれた容貌もあいまって、非常に可愛らしい、応援したくなるような女性なのだ。
これは、多くの人との繋がりが欠かせない職場において、何よりも重要な才能だと思う。誰だって、どんなに優秀でも、憎らしい女性と働きたくはないだろう。特に、ビジネスでは、男性が多いのは事実なのだから、その男性を見方につけられるにこしたことはないのだ。まず、普段、滅多にthesis adviserをしないLarry Summers 教授に気に入られたところから、彼女の恵まれたキャリアが始まっている。その幸運を継続、拡大(これは、本人の職務遂行能力が必要)する力と、応援される力の相乗効果が、今の彼女の地位を築き上げているのだと思う。
最も印象深い自分を省みる機会を与えてくれたchapter は、Seek and Speak Your Truth という章。新しくチームに加わったメンバーのちょっとした報告の仕方、仕事の不手際に、累積した怒りが溜まっていたところ、この著書から、「どう思っているか、何を改善してほしいのか伝えたか?」と問いかけられた。上司面するのが嫌だったので、注意しなかったけれども、それは、私のミスなのだ。リードする立場になった以上、お互いの成長のために、苦いことも言わなくてはならないし、それを溜め込んでしまうと、自分のイライラも募る。何が悪くて、どうするべきか、伝えるのは、私の責任なのだ。つい、これまでMBAプログラムで課題に取り組んでいた時のように、それぞれの仕事はそれぞれがこなす、こなせて当たり前という感覚でいたが、仕事の仕方を教えるのも、私の仕事なのだということを認識する良い機会になった。
彼女は、働く女性、働きたいと願う女性の仕事と家庭の両立を応援、後押ししたいと思い筆をとったそうだが、読後に、スーパーウーマンでなくても社会にインパクトを与えるような大きな仕事ができるという希望が持て(ちょっと筆者の意図とは違うだろうが(笑))、結果的には、読んでよかったと思った本です。でも、随所に、アメリカ人女性だなあ〜と感じました。